
タレントプールで採用戦線を勝ち抜く!人材難の時代に優秀な才能を確保するには
これまでの採用現場では、条件が折り合わなかったりタイミングが合わなかったりして採用までは至らなかった優秀な人材を「ご縁がなかった」とそれっきりにしてしまうことが多くありました。しかし、考えてみればそれはものすごくもったいないことです。
そんな現状を変えられるかもしれない概念、それが「タレントプール」です。今回は、タレントプールとはなにか、活用するメリット・デメリット、事例などをご紹介します。
タレントプールとは?採用候補者との「ご縁」を維持する考え方
タレントプールとは、自社の採用候補になりうる(が、まだ採用には至っていない)優秀な人材のデータベースです。2001年に米国の大手コンサルティング会社マッキンゼーがその重要性を説いたことで注目を浴びるようになりました。直訳すると「才能(タレント)を蓄積する(プール)」となります。
採用活動において、候補者の能力は十分でも条件や採用枠の都合で不採用にせざるを得ないことはよくあります。今回の募集には合致しないが、後々必要になりそうなスキルを持っている候補者を見つけることもあるでしょう。企業としては「採用したい!」と思っても、求職者側のタイミングが合わないということもあります。
そういった候補者をデータベース化して、必要に応じていつでも声をかけられる状況に整えておくのがタレントプールの基本的な考え方です。すぐに採用はできないが逃したくない人材の情報を登録するほか、自社に興味のある人材を公募することもあります。また、転職・起業などにより一旦退職したものの、機会があれば戻ってきてほしい人材などもデータに加えるのが一般的です。
タレントプールのデータを基に採用を行うデータベースリクルーティング
タレントプールはあくまでデータベースであり、それ自体はただの情報です。タレントプールの情報を活用して採用につなげていくことを「データベースリクルーティング」といいます。
参考:https://www.hrpro.co.jp/agora/2590
タレントプールは、商品やサービスのマーケティングで言う「顧客情報」にあたるもので、その情報を「どう活用するか」が重要です。情報を売上げに繋げるためには、顧客情報をCRMで管理し、情報に合わせた施策(メルマガが配信やサポートなど)を実施しなければいけません。
同様に、タレントプール自体はあくまでデータであり、このデータを採用に繋げるためにはダイレクトリクルーティングの考え方が必要です。タレントプールから実際に採用するための様々な施策から最適なものを選び、実践していくことで、構築したタレントプールを採用活動に活かすことができます。
タレントプールを活用するメリット
タレントプールを活用したデータベースリクルーティングには、採用する側/される側ともにメリットがあります。
採用する側(企業側)のメリット
1.優秀な人材との接点を持ち続けられる
一度に採用できる人数には限りがあります。「優秀だけれど僅差で今回は採用見送り」となった人材のデータを蓄積しておけば、今後ほかのポジションで人材が必要になった場合にアプローチしやすくなります。また、知人の中で「優秀だけど今は転職意向がない」といった人をタレントプールに入れておけば、接点を持ち続けやすくなります。つまり、採用における機会損失を減らせるということです。
2.採用コストを抑えられる
募集をかけるたびに条件に合致する候補者を一から集め直すのは非常にコストがかかります。データベース化されたタレントプールから条件を指定してピックアップすることで、コストを抑えることが可能です。また、募集側と応募側のつながりを維持することで、お互いに時間をかけて見極めができるようになります。その結果、マッチ度が高まり離職率が下がるという長期的なコスト削減のメリットもあります。
採用される側(個人側)のメリット
1.キャリアの選択肢を広く持つことができる
他社のタレントプールに属することで自社以外にも目を向けることができるようになり、常に次のキャリアアップを意識できるようになります。意識だけではなく、実際に転職を考え始めた際に自分に合ったオファーを貰える可能性も高くなります。
2.長期的に企業を見極められる
転職活動を開始してからの短期間で企業を見極めるよりも、時間をかけて見極めることで転職の満足度が高まります。不採用になったり内定を辞退した企業でも、好印象を持っている企業はあるはずです。そういった企業のタレントプールに属して接点を持ち続けることで、長期的に相性を見極めることができます。
タレントプールのデメリット
タレントプールをしっかりと活用できれば、企業側/個人側ともに大きなデメリットはありません。しいて言えば、せっかくデータベースを作ったのにうまく活用できないことでデータ収集コストが無駄になってしまうケースがあることが、企業側にとってのデメリットにあたります。
よくあるのが、データの選別や管理ができておらず、タレントプールが機能しないケースです。また、候補者とのつながりを維持するためのコンテンツ作成やイベント開催のコストがかかりすぎて、タレントプールの利用によって削減できたコストに見合わない場合もあります。
いずれもタレントプール自体に問題があるわけではなく、運用に問題がある場合のデメリットです。こうならないために、適切なツールを使う・実践前にコンサルティングを受ける・そもそも自社に適した手法なのかを十分に検討するなど、活用のための下地作りを徹底しましょう。
タレントプールを活用した採用活動の手順
実際にタレントプールに基いて採用活動を行うにはどのような手順を踏んだらよいのでしょうか。順を追って解説します。
1.採用候補となる人材(=タレント)を蓄積(=プール)する
タレントプールはデータベースなので、データを集めなくては始まりません。SNSの活用やチームメンバーからの紹介を含め、あらゆるチャネルを使って人材を集めて自社に適したデータベースを構築します。人気企業ならば、登録を希望する人材から応募をしてもらう手段もあります。
2.定期的にコンタクトを取り続ける
時間がたつにつれて、タレントプールに蓄積された人材とのつながりは弱くなっていきます。いざという時に使えるデータベースにしておくには、自社や業界に関する情報の配信や開催するイベントに招待するなど、接点を持ち続ける必要があります。どうしてもほしい人材であれば個別に連絡をとり、定期的に会って話をするのもよいでしょう。
3.最適な求人が出たときや転職意向が生まれたときにアプローチ
欠員や事業拡大で人を採用する必要があれば、タレントプールの中から適した趣向やスキルを持つ人に声をかけます。きちんとデータベースの構築ができていれば、適切な人材をピックアップできるでしょう。
自社の都合で声をかけるほかに、タレントプール内の人材が転職に興味を持ったタイミングでオファーをするケースもあります。
タレントプールの活用に便利なツール
タレントプールを採用活動に取り入れる際に便利なツール類をご紹介します。
SNS
FacebookやTwitter、LinkedIn、WantedlyなどのSNSを使用します。人材の発掘に使ってもよいですし、Facebookのクローズドグループなどは定期的なコンタクトにも使うことができます。
タレントプール(採用管理)専用ツール・サービス
タレントプールを利用した採用活動に特化したツールやサービスが提供されています。また、採用管理ツールの一機能としてタレントプール機能が搭載されているものもあります。代表的なものを紹介するので、必要に応じて自社に合ったものを検討してみるとよいでしょう。
TalentCloud

タレントプールの構築と運用に特化した採用管理システムです。人材を登録してデータベースを構築する基本的な機能のほか、候補者とチャットで連絡をとる機能や求人サイト構築機能を備えています。タレントプールに登録されている候補者は、自身の会員ページからメッセージを確認したりチャットに参加したりできます。
Talentio

さまざまな求人チャネルからの応募と選考を一元管理できる採用管理システムです。採用サイトの作成機能やメールの一斉送信機能があり、タレントプールの構築・運用に利用することができます。定期的に連絡をしてつながりを維持するためのアラート機能もついています。
タレントプールの活用事例
実際にタレントプールを採用活動に活用している企業の事例を3つご紹介します。
DELL
DELLではWebサイトにタレントプールへの登録ボタンが設けられており、希望するポジションや地域を選択して登録できます。また、応募者として登録するだけではなく紹介者になることも可能で、SNSと連携して友人知人にDELLの求人を紹介できるようになっています。求人を見にきたけれども条件が合わなかった人が条件に合いそうな人材を紹介をすることで、つながりのある人材の輪が広がっていく仕組みです。
ゼネラルモータース
GMも自社サイト上に「Talent Community」という名称のタレントプールへの登録ページがあり、名前や現在の所属などのプロフィールとレジュメ(職務経歴)を登録できるようになっています。レジュメはファイルを直接ファイルをアップロードするほかに、Linkedinとアカウント連携して登録することも可能です。
日本IBM
日本IBMでは、タレントプール候補者リストを充実させる役割「タレント・アクイジション・ソーサー(TAS)」を採用チームに加えました。TASはタレントプールの構築とメンテナンスを行う専門職です。経営戦略や事業の動向から必要となる人材を予測し、素早くニーズに対応します。同社ではタレントプールを積極的な採用活動のための重要な柱の1つと位置付けており、専門の役職を置くことでタレントプールの充実とつながりの維持に力を入れています。
参考:https://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NBO/18/bizreachibm0410/
タレントプールは採用活動を勝利へみちびくデータ
情報化社会においては、必要な情報を持っているかどうかが勝負を大きく左右します。採用活動も例外ではありません。自社のタレントプールを充実させられるかが、優秀な人材獲得のカギを握るでしょう。